同じ会場、同じチームのホームゲーム。ラグビー観戦としても、まだ2回目です。
天気は薄曇り。寒さも相変わらず。席も同じバックスタンドの上段。
前回と比べて、大きく何かが変わったわけではありません。
それでも、会場に着いた瞬間に感じた空気は、前回とは少し違っていた気がします。
駐車場を出てすぐ目についた、応援グッズを身に着けた人の多さの影響か…
アウェイゲームにもかかわらず遠征してきたファンの熱量の影響か…
観客の雰囲気がどこかこなれていて、会場全体から「ここはホームだ」という空気を感じました。
この日の相手は、日本代表のリーチ マイケル率いる東芝ブレイブルーパス東京。
リーグ2連覇中の絶対王者で、ラグビーファンでなくても、その名を耳にしたことがあるであろう強豪中の強豪です。
会場の関心は、勝敗そのものよりも、王者のプレーや有名選手たちのプレーに向いているようにも見えました。
今思えば、そうした空気も含めて、この試合は特別なものだったのかもしれません。
結果的に、自分にとっても「ただの2回目のラグビー観戦」では終わらなかったこの一戦を、振り返っていきます。
試合前に感じた、前回とは違う「ホームの空気」
2月7日、13時キックオフ。薄曇りの空の下、再び同じスタンドに座りました。
席はバックスタンド上段。前回とほぼ同じ高さ、同じ向きです。
駐車場を出たあたりから、応援グッズを身に着けた人の多さが目につきました。
前回配布されたバスケシャツや、ファンクラブ特典のニット帽を身に着けた人たちが目立っています。
自分も含めて、明らかに「身に着けて応援する」人が増えていました。
栃木開催としては2回目。観る側も、少し慣れてきたのかもしれません。
スタンドに漂う雰囲気はどこか落ち着いていて、こなれている。前回のような”初めて感”よりも、「ここがホームだ」という空気が自然に立ち上がっていました。
この日の相手は、リーグ2連覇中の絶対王者、東芝ブレイブルーパス東京。
ウォームアップから漂う雰囲気には、やはり貫禄があります。
素人目にもパスやキックの一つひとつが整っていて、「強いチームを見に来た」という実感がありました。
キックオフ前の会場の関心も、どちらかといえば「勝てるかどうか」よりも、「王者がどんなプレーを見せてくれるのか」に向いているように感じます。
だからなのか、決して悪い意味ではなく、どこか会場全体にリラックスムードが漂っていました。
有名選手の名前がアナウンスされるたびに、スタンドが少しざわつく。その反応もまた、前回とは違う種類の熱でした。
キックオフ直後――まだ「観ているだけ」だった自分
キックオフのホイッスルが鳴っても、まだどこか客観的に試合を見ている自分がいました。
目の前でボールが動き、タックルが決まり、ラインが押し上げられていく。
その一つひとつを、「なるほど、こういう展開になるのか」と追いかけている感覚です。
席がフィールド中央部だったこともあり、その感覚はより顕著でした。
前半、ホンダヒートが2トライを先行したときも、正直なところ驚きはあっても興奮まではしていませんでした。
「思っていた展開と違うな」とは感じつつも、まだ”応援している側”というよりは、”面白い試合を見ている観客”という立ち位置に近かったと思います。
相手はリーグ2連覇中の絶対王者。
東芝の最初のトライもあっさりと決められた印象で、どこかで巻き返してくるのではないかという予感のほうが強かったのも事実です。
スタンドの空気も、まだどちらかに大きく振れているわけではありません。
トライが決まれば歓声は上がるものの、どこか様子をうかがうような反応。前回と同じく、試合そのものを楽しんでいる時間帯でした。
前半の展開と、会場に流れていた”観察モード”
前半の流れは、想像していたものとは少し違っていました。
正直、絶対王者の前に必死で食い下がるヒートの姿を想像していました。
ところが実際は、ホンダヒートが2トライを先行。
王者相手に主導権を握る時間帯が続き、スタンドにもどよめきが広がります。
それでも、さらっと点を奪い返してくる東芝を見ると、まだどこかで「どこでスイッチ入るんだ?」という感覚が消えませんでした。
その空気を大きく揺らしたのが、マヌ・アカウオラ選手のインターセプトからの独走トライです。
一瞬の隙を突いたプレーが、そのままゴールまでつながる。スタンドが大きく沸きました。
「意外と可能性あるのかな」
そんな言葉が頭をよぎったのも、この瞬間だったと思います。
ただ、それでもまだ確信には至りません。
点差が開いても、相手は王者。どこかで試合の流れを引き戻してくるのではないか、という思いのほうが強く残っていました。
前半終了間際、東芝がトライを返したことで、その予感はより強まります。
「後半は流れが変わるかもしれない」
スタンドにも、どこか緊張が戻ってきたように感じました。
前半が終わった時点でも、私はまだ”応援している側”ではなく、”番狂わせを期待する傍観者”に近かったのだと思います。
後半、いつの間にか「勝ってほしい側」にいた
後半が始まっても、頭のどこかでは「東芝に火が付く瞬間があるはず」と思っていました。
点差はあっても、王者相手に安心できる状況などない。
そんな前提は、まだ消えていませんでした。
今思えば、「安心できる状況にない」というのは、すでに自分が傾きかけていた予兆なのかもしれません。
後半最初のトライをホンダヒートが決めた瞬間を境に、会場の空気がヒート勝利を期待する側に傾き始めた気がします。
スタンドの歓声も、驚きの声ではなく期待に満ちた声援が混じり始めました。
気づけば、自分の中でも視点が少し変わっていました。
「どんなプレーをするのか」ではなく、「このままいけるのか」に意識が向いている。
いつからだったのかは分かりません。
でも、20点差以上を保ったまま後半残り半分を切ったあたりでは、
「もしかして本当にあるのではないか」
「いけるなら、いってほしい」
と、確実にヒートの勝利を願っていました。
このころには、私はもう試合を”観ている”のではなく、”ホンダヒートを応援している”一人になっていました。
終盤のTMO判定と、独特な「ノーサイド」の余韻
後半残り6分。
ここから試合は一気に様相を変えました。
当初の予想通り、やはり王者にスイッチが入ります。
20点差あったリードが、立て続けの3トライでみるみる縮まっていく。
さっきまで「いけるかもしれない」と思っていた空気が、瞬く間に緊張へと変わりました。
やはり王者は王者。そう思わせる怒涛の追い上げでした。
スタンドの声も、ヒートの大金星への期待から、東芝の大逆転への警戒へと揺れ始めます。
さっきまで未来を想像していたはずなのに、今はただ目の前の一瞬に集中している。そんな時間が続きました。
そして、最後のプレー。
判定はTMOへ。会場全体が、静まり返ります。
歓喜の準備も、落胆の準備も、どちらもできないまま、時間だけがゆっくり流れていきました。
判定が下り、試合終了。
正直、爆発的な歓喜ではありませんでした。
予想外の展開、予想外の終わり方。戸惑いのような空気が一瞬広がり、それが次第に拍手へと変わっていく。
その拍手は、勝利への歓声というよりも、「よくやった」という承認のように聞こえました。
大歓声ではなく、拍手で終わるノーサイド。
それが、この試合らしい終わり方だったのかもしれません。
「2回目のラグビー観戦」ではなく、「ホンダヒートの試合」だった
試合が終わってから、ふと考えました。
これは「2回目のラグビー観戦」だったのだろうか、と。
前回は、寒さに震えながらルールを追い、スタジアムの雰囲気を楽しむ時間でした。
ラグビーという競技そのものを体験しに行った、という感覚が強かったと思います。
でも今回は、少し違いました。
いつの間にか「どんなプレーをするのか」よりも、「勝ってほしい」と思っている自分がいました。
王者のプレーを見るために来たはずなのに、気づけばホンダヒートの一挙手一投足に一喜一憂している。
それは応援グッズを身に着けていたからなのか、2回目という慣れがあったからなのか。
理由ははっきりしません。
ただ確かなのは、私はこの日、「ラグビーを観に行った」のではなく、「ホンダヒートの試合を観に行った」のだということです。
同じ会場、同じホームゲーム。
それでも、相手が変わり、展開が変わり、空気が変わることで、観戦体験そのものも変わる。
2回目の観戦は、ラグビーという競技を知る時間ではなく、応援する対象を見つけた時間だったのかもしれません。
相手が変わるだけで、観戦体験はここまで変わる
同じ会場で、同じチームのホームゲームを観戦しました。
天気も寒さも席も、ほとんど前回と変わりません。
それでも、体験はまったく別のものになりました。
対戦相手が絶対王者だったこと。
その王者を相手に、ホンダヒートが堂々と渡り合ったこと。
そして、最後まで分からない展開になったこと。
条件が少し変わるだけで、スタンドの空気も、自分の感情も、これほどまでに揺れ動く。
初観戦では、ラグビーという競技を知る楽しさを味わいました。
2回目の観戦では、応援する対象を見つける楽しさを知りました。
次にスタンドに座るとき、自分はどんな立ち位置で試合を見るのか。
それもまた、少し楽しみになっています。
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