アイキャッチ:auto sport Web:ノリスがF1チャンピオンに輝く。フェルスタッペン優勝も逆転ならず【アブダビGP決勝レポート】より引用
2025年のF1は、久しぶりに“何が起きてもおかしくない”と感じさせるシーズンでした。
序盤はマクラーレンがMCL39の完成度を武器に主導権を握り、ザントフォールト終了時点ではオスカー・ピアストリがマックス・フェルスタッペンに対して100pt以上の差をつけました。
この時点では「今年の流れは決まった」と感じたファンも多かったと思います。
しかし、終盤9戦の流れは、中盤までと大きく変わりました。
フェルスタッペンは残り9戦で猛烈な追い上げを見せ、オスカーには100pt以上の大差を逆転し、トップのランド・ノリスにも最大80pt以上の差から2pt差まで迫りました。
最終戦でノリスがなんとか逃げ切ったことは、この年を象徴するドラマとなりました。
さらに、異例の6人ルーキーが参戦し、結果を残したドライバーと苦戦したドライバーの明暗がくっきり分かれました。
そして、レッドブル内部のシート争いは予想外の展開を見せます。
開幕前に本命とされたリアム・ローソンがわずか2戦で外れ、角田裕毅が本隊へ昇格。
その後もハジャーやリンドブラッドの名前が浮上し、“本命”と“つなぎ”が入れ替わり続ける混沌とした一年になりました。
2025年は、勢力図の揺らぎ、世代交代の兆し、そしてチーム内部の迷走という複数のテーマが重なったシーズンでした。
本稿では、シーズンを動かした“三つの波”をTKD視点で整理し、2025年F1の全体像を振り返っていきます。
2025年F1シーズン・三大トピック総括
2025年のF1を振り返ると、シーズン全体には大きく“三つの波”がありました。
ひとつは、中盤から終盤にかけて勢力図が激しく揺れ動いた“競争力の波”です。
もうひとつは、異例の6人ルーキーが参戦し、それぞれの立場で成果と苦戦が分かれた“世代交代の波”です。
そして、レッドブル内部のシート争いが長期にわたり影響を与えた“チーム内政治の波”です。
この三つが複雑に絡み合い、2025年は近年のF1でも特に読み応えのあるシーズンになりました。
力関係の“揺らぎ”と再収束|最大100pt差から2pt差まで迫ったマックスの底力

auto sport Web:ピアストリ3勝目でマクラーレンがワンツー。ブレーキトラブルという「最悪の悪夢」に見舞われたノリス
2025年序盤、勢力図はマクラーレンの独走状態でした。
MCL39は開幕から高い完成度を発揮し、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリの2人が序盤~中盤で15戦中12勝(オスカー7勝・ランド5勝)を積み上げます。
一方のマックスは15戦で2勝に留まり、オランダGP(ザントフォールト)終了時点ではランキングトップだったオスカーがマックスに対して100pt以上の差をつけました。
この時点でチャンピオン争いの行方は、オスカーとランドの一騎打ちになる──多くの人がそう確信する状況でした。
しかし、イタリアGP(モンツァ)からシーズンの流れがガラッと変わります。
マックスはモンツァ~最終戦アブダビGPまでの9戦で6勝し、また勝利とはいかなかった3レースも2位1回・3位2回と表彰台を逃すことなく、怒涛の追い上げを開始します。
ベルギーGP(スパ)での大型アップデートの後、技術責任者ピエール・ワシェが「セットアップの方向性が広がり、ドライバーが扱いやすくなった」と語ったとおり、アップデートの効果もあるでしょうが、まさに水を得た魚のような豹変ぶりでした。
これにより、後半戦の平均獲得ポイントではマックスがマクラーレン勢を大きく上回り、圧倒的劣勢からの逆転チャンピオンを期待せずにはいられない──そんな雰囲気が漂い始めました。

auto sport Web:勝者フェルスタッペン、2点差で王座に届かず「辛くはない。ここまで挽回したことを誇りに思う」袂を分かつホンダには感謝より引用
この後半戦でフェルスタッペンは、オスカーに対して100pt以上あった差を逆転し、かつ10pt以上の差をつける結果となりました。
また、初の戴冠に輝いたノリスに対しても2ptまでマージンを削り取り、最終戦アブダビでランドが一つでも順位を落としていれば逆転チャンピオンというところまで持ち込みました。
結果的にランドが3位を守って逃げ切りでタイトルを獲得しましたが、2025年終盤のフェルスタッペンのパフォーマンスは、2021年の初戴冠時同様マシン性能が劣る状況でも「ドライバーとしての総合力」で勝負を作れることを示したシーズンになりました。
最終的な印象はマックスがさらっていった形になったとはいえ、チャンピオンをつかみ取ったランドとマクラーレンの“シーズン通した安定感”もまた、F1という競技の本質を示していると思います。
ルーキー旋風|6人が残した“光と影”と世代交代の予兆

F1-Gate.com:2025年F1ルーキーをF1 TV解説者が分析 前半戦の光と影より引用
2025年は、10年ぶりとなる“6名同時ルーキー参戦”という異例の一年でした。
メルセデスのキミ・アントネッリをはじめ、ハースのオリバー・ベアマン、キックザウバーのガブリエル・ボルトレート、アルピーヌのジャック・ドゥーハン、レーシングブルズのイサック・ハジャー、そしてフル参戦初年度となったリアム・ローソン(※)がF1デビューを果たします。
※2024年にスポット参戦経験はあるものの、2025年が初のフルシーズンのため実質ルーキー扱い。
その中でも光ったのは、アントネッリとハジャーです。
アントネッリは複数回の表彰台に登壇し、チームの差はあるものの次点のハジャーの約3倍となる150ptを獲得してランキング7位につけました。
またハジャーも予選で安定してQ3に進出し、決勝でも上位に食い込むなど、チームメイトを上回りつつポイントを積み重ねました。
一方で、ローソン(2戦)やドゥーハン(6戦)のように、シーズン序盤でシートを失ったルーキーもいました。
ローソンはシーズン開始前にはレッドブル昇格による脚光を浴びていましたが、開幕2戦でほぼ全セッション最下位というトップチームにはあるまじき超低パフォーマンスが引き金となり、わずか2戦でシートを失いました。
とはいえ、姉妹チームであるレーシングブルズの角田くんとのスワップだったため、F1のシート自体は失わずに済んでいます。
個人的な見解ですが、2戦という異例の早期判断が「RBで様子を見る」という方向性を生んだ気がします。
ある意味、自身の超低パフォーマンスがキャリアをつないだ側面もあったように感じ、私の見てきたF1でもほとんど例がなく、極めて異例のケースでした。
その後のRBでのパフォーマンスは、決して悪くはなかったですからね。
6人のルーキーがそれぞれ異なる結果を残したことで、F1が「次の世代」へ確実に移行しつつある空気が強まりました。
世代交代は突然起こるものではなく、こうした“複数の若手が同時に参戦し、それぞれの未来を懸けて争うシーズン”が転機になることが多いです。
2025年はまさにその代表例と言えるでしょう。
レッドブル内輪シート争い|本命と“つなぎ”が入れ替わり続けた混沌の一年

auto spot Web:角田裕毅、マックスのためのバトルで“不可解な罰”。区切りの年を振り返り「不運のなかで全力を尽くし能力を示した」より引用
2025年のF1で最も読みづらかったのが、レッドブル内部のシート争いでした。
開幕前は、ペレス離脱後の後任としてリアム・ローソンが“本命”とされていましたが、ローソンは開幕2戦で結果を残せず、3戦目を前に角田裕毅と交代する異例の判断が下されました。
ローソンはレーシングブルズへ戻り、角田が本隊へ昇格する形でシーズンが再構成されます。
しかし、シート争いの混乱はここで終わりませんでした。
レーシングブルズで力強いパフォーマンスを見せていたイサック・ハジャーが、なかなか安定した結果を残せずにいた角田くんと入れ替わるという噂は、シーズンを通して常に流れていました。
ハジャーが予選で安定して強さを見せていたことも、角田くんとの比較をより大きくしました。
また、ハジャーの2026年の本隊入りが有力視される一方、ジュニアのリンドブラッドも候補として名前が挙がり、複数の可能性が同時進行で語られる状況になります。
ホーナーは「競争力のための判断」と説明していましたが、判断基準がレースごとに変わり、政治的側面とスポーツ的判断のどちらが優先されているのか読み取れない場面も多く見られました。
結果として、角田くんは3戦目の日本GP(鈴鹿)以降シーズン終了まで本隊で戦い抜く形になりました。
しかしながら、レッドブルはシーズンを通して「本命」と「つなぎ」が入れ替わり続ける、近年でも珍しいほど不安定な体制になりました。
マックスの安定した戦いぶりが際立つ一方で、チームとしての方向性が定まりにくい一年だったと言えます。
2025年シーズン全体のまとめ

auto sport Web:【F1アブダビGP決勝の要点】「優しすぎる」と評されたノリスが初戴冠。爽やかな新チャンピオン誕生の光景
2025年のF1は、序盤〜中盤のマクラーレン独走、終盤のマックス怒涛の追い上げ、そして2pt差でのチャンピオン戴冠という──ドラマが凝縮された一年でした。
ルーキー6人の参戦は世代交代を象徴し、それぞれにとって明暗がくっきりとしたターニングポイントとなるシーズンになりました。
また、レッドブルは明確なドライバー方針を定めきれず、内部競争の激しさがそのままレース戦略や起用に影響していたように見えました。
技術面では、マクラーレンの完成度の高さと、後半戦でのレッドブルの大型アップデートがシーズンの展開を大きく左右しました。
結果として、F1は久しぶりに“順位が固定されないシーズン”となり、どのレースでも順位が入れ替わる予測不能さが続きました。
それが面白くもあり、もやもやする場面もあり、レースファンのあいだで様々な議論や論争を生んだ一年でもありました。
2026年への布石
2026年はパワーユニットとエアロの大幅なレギュレーション変更が実施されます。
各チームはすでに次期レギュレーションへ向けた開発を進めており、2025年の戦い方にもその影響が表れていました。
フェラーリのように早々に2026年の開発に専念すると宣言したチームもありました。
レッドブルが詳細を隠しつつも大型アップデートを投入した背景には、2026年に向けた競争力確保の意図も見え隠れします。
ドライバー市場では、角田・ハジャー・ローソンら中堅〜若手勢が2026年体制の鍵を握る可能性があります。
世代交代が進む中で、どのチームが新レギュレーション初年度にアドバンテージを掴むのか、今後も注目が集まります。
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